パソコンの普及とともに眼精疲労に悩む人は増え続けてきました。 ノートPC、そしてスマートフォンの登場により、この流れは決定的なものになっています。 しかし、眼精疲労は「自然に増えた」のではなく、生活環境と従来の眼鏡処方が「意図せず増やしてしまった」 ものだと私は考えています。
このように ほぼ一日中「近方視」優位 にもかかわらず、眼鏡を作るときには「遠くが最もよく見える度数」が喜ばれ、
処方側も患者側もそれを当然としてきました。
しかし、これは毛様体筋(調節)への負担を全く考慮されていません。
私は30数年前から、毛様体筋に過負荷がかかると筋自体に微細な振動が生じ、その増悪が眼精疲労の本態であることに注目し研究を進めてきました。
その結果、20数年前に「調節機能解析装置(Fk-map)」を開発し、
東京での診療では多数の眼精疲労患者を治療してきました。
昨年より後輩に臨床を譲り、後進育成のための「眼科塾」を立ち上げました。
1年間の指導を経て、今こそ多くの眼鏡作製技能士や臨床医師の協力が不可欠だと強く感じています。
信じ難いかもしれませんが、現代の眼精疲労の多くは 自律神経のバランス破綻が本質です。
ボーッと見ているときに自然に焦点が合っている距離(調節安静位)は、正視眼でおよそ 1m付近 にあります。
この位置より近くへピントを合わせる「正の調節」は 副交感神経 が強く興奮し近視度数を上げます。
反対に調節安静位より遠くへの「負の調節」は 副交感神経が緩んで近視度数を下げます。このとき、交感神経 が補助的に作用します。
ところが、従来の眼鏡処方では
調節安静位を 5m に設定された度数の眼鏡で日常生活を送らせてしまっています。
結果として、
へと進行し得ます。
私はこれらの患者を30年以上診てきましたが、
驚くほど多くが 眼鏡の度数を変えるだけで改善 していきます。
これを広く普及させることは、急務だと感じています。
慢性ドライアイ、頭痛、肩こり、不定愁訴、自律神経失調様症状を示す患者では、
まず Fk-map による「調節緊張度」を確認します。
特に遠方視標で HFC値が高値 の場合、副交感神経過剰型の眼精疲労と判断できます。

調節反応量の大小はここでは問題にしません。
<最初に、乱視レンズの設定>
(※オートレフ値に必ず含まれる調節の影響を避け、副交感神経負荷を減らすため)
<球面度数の初期値>
オートレフ値から-1.25D 引いた値を初期値として視力測定を開始します。
もし、この設定でも1.0以上の視力が出る場合には、さらに-0.75D弱めた値から測定を開始します。
「初期値の視力は1.0未満」になるよう設定します。
(※矯正視力測定時に調節の介入を極力少なくするのが目的)
レンズ交換法で -0.25Dずつ球面度数を増加し、
最もよく見える最小度数を決定します。
これが片眼視での完全矯正屈折値です。
両眼同時雲霧法の詳細は別ページに譲りますが、
この工程で患者の 調節緊張を極力鎮めた状態での適正矯正度数が得られます。
もっと的確な推論を述べれば、患者さんの眼の調節安静位を1m前後に設定して、
日常生活の中で正の調節と負の調節を頻繁に切り替えなければならない矯正を提供する
ことになります。
これが自律神経の偏りを防ぎ、自律神経のバランスを整えます。
多くの症例で、 オートレフ値より -0.50D〜-0.75D 弱い度数 になる傾向があります。
遠近用あるいは遠中近用の累進屈折力レンズで処方します。
累進屈折力レンズは、必ず歪みの少ない非球面累進設計(両面非球面推奨)を選びます。
古い二重焦点性の高いデザインでは効果が出ません
遠方視が弱く感じられるため、初期には不満が出ることが多い。
しかし、患者にはこう伝えてほしい。
「この眼鏡はあなたの自律神経を守る"治療用眼鏡"です。
たいていは2週間くらいで慣れが進み、身体の調子が変わります。
この見え方を嫌がらないで、受け入れるように努力して、起床直後に装用を開始して、
一日中外さないようにして下さい。昼間の仮眠程度ならば、掛けたまま休んで下さい。」
この方法により、
など、多くの改善例を経験してきました。
おそらく 8割の患者はこの初伝だけで救済可能です。